コンポジットとは、複数の性質の異なる素材を組み合わせて新しい特性を得ることで、複合材料などを意味します。
秋田県産業技術センター(以下AITと略す)では、航空機等の一次構造材(主翼や胴体等の主要強度を受け持つ部材)として主流になりつつある炭素繊維複合プラスチック材料(CFRP)に関わる技術を開発し、県内企業に移転するため、「コンポジットセンター」を平成21年に開設しました。今回は、コンポジットセンターの取り組みについてご紹介いたします。
CFRPは炭素繊維の束を接着剤となる樹脂で固めたもので、軽量、高強度、高剛性、高耐食性などの特徴を有し、航空機の機体や自動車部品などにおける金属材料の代替として利用が急速に拡大している材料です。ボーイング社やエアバス社の最新鋭旅客機B787、A350では総重量の50%(体積で実に90%)にCFRPなどの先進複合材料が用いられるなど、特に航空機分野での需要拡大が顕著です。
しかし、このCFRPを実用として供するには、高価である、切削加工が容易でない、雷や電磁波シールドに難があるなどの課題が山積しています。コンポジットセンターは、当センターの技術を結集して上記課題に解決策を提案すべく開設したもので、AIT内の2室を充てて、CFRPの成形・加工・評価に関わる設備を設置し、研究開発、人材育成、設備利用などの機能を持っています。
(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)からCFRPの評価を行っていた技術者を研究員として採用し、着々と実績を積み重ねています。
これまでの成果ですが、
1) PDエアロスペース(名古屋市)の宇宙往還機の実証試験機にCFRP製キャノピーパネルを供試しました。
2) 秋田大学で実施しているハイブリッドロケットの筐体をCFRPで製作し、供試するとともに、県内企業へ製法を技術移転しました。
3) CFRPの製法講習
由利本荘市商工会主催の航空機産業参入のための人材育成事業(ものづくり人材育成)でCFRPの製法講習会を2年連続で実施しました。
4) CFRPの補修に関する講習会を実施
一昨年の9月にコンポジットセンターを会場に、CFRPの補修に関する講習会を日本で始めて開催したのを皮切りに、本年1月も曲面の補修に全国から受講者が集まりました。
5) CFRP加工用のダイヤモンドコーティング超硬素材のドリルを開発し、ドリルメーカーで従来の3倍長持ちをすると評価されました。
6) その他
県内外の企業と共同研究で様々なCFRP製品を試作しました。
など研究開発から人材育成、機材提供まで様々な分野に貢献をしてきました。さらに、今年度から秋田大学の技術シーズを活用して、従来の1/10の短時間で成形するプロジェクトにも参加を予定しています。
これからは、県内企業が移転した技術で売れる製品作りに向かえるよう支援するとともに、航空機と並んで需要が期待される自動車向けのCFRPの開発など、今後とも県内産業振興に資する業務に励んで参ります。ゆくゆくは東日本を代表するCFRPの研究開発拠点に育て上げたいと考えています。